職場のメンタルヘルス対策最前線

先進企業の取り組みの紹介

(株)島津製作所
専任の臨床心理士が、タイムリーにカウンセリングを実施。
産業医による睡眠セミナーでセルフケアの後押しも

従業員のメンタルヘルスを守り、業務効率を高めることは、企業にとって重要課題の一つ。日本を代表する機械メーカーの島津製作所は、2010年頃から本格的な対策を始めました。従業員が相談しやすい環境を整え、復職者の再休職率を3分の1程度に抑えています。京都本社の境浩史氏と、東京支社の横山泰久氏に、それぞれの現場の取り組みと課題を伺いました。

当記事はインタビュー後編です。前編はこちら

Interviewer

  • (株)島津製作所
    人事部マネージャー
    境 浩史
  • (株)島津製作所 東京支社
    総務部シニアマネージャー
    横山 泰久

休職者の支援についても聞かせてください。

当社の休職期間は最長3年と長い点が特徴です。その間、月1回は上司に連絡することを基本としていますが、人間関係が理由でメンタル不調に至った者には柔軟に対応しています。人事部が代わりに連絡を受けることもあれば、会社として契約しているメンタルクリニックを受診すればいいとすることもあります。
京都本社では、復職が近くなると臨床心理士のカウンセリングがあり、復職後も6ヵ月間はフォローアップします。安定して出社できるようになったら、社内の産業カウンセラーにバトンタッチし、さらに1年くらいフォローアップしています。

横山

東京支社では、復職が近くなった者に対し「タッチ&ゴー」を実施しています。午前9時に出社し、「出席表」にはんこを押して帰る。そうやって出社することに慣れてきた頃、産業医の面談で復職を判断します。また、休職期間中にどのようなリズムで生活しているか、生活記録表に記録するようにしています。一部の従業員には、ITを用いた就労定着支援システム 「SPIS」(エスピス)を使用しています。

SPIS」は2016年からトライアルで開始し、2017年に正式導入しました。睡眠時間や寝付きの良し悪し、朝起きた時の気分などを記録します。当事者が書いたことは上司や産業保健スタッフ、外部の臨床心理士などが共有し、みんなでコメントを返します。1年以上続けてみて、不調の波がどういうときにあるか、コメントにどういう傾向があるのかなど、その人の特徴などがわかりました。

横山

SPISは、メンタル不調に至った者をみんなで“見守る場”です。ある従業員は上司との関係で悩み、休職していました。本人の性格上、嫌なことがあっても不満を言い出せません。それでも、SPIS上では少しずつ自分の意見を書けるようになりました。

思わぬ波及効果もあります。ある別の従業員が、勇気を持って初めてSPISにコメントを書いた時、上司は「そうしたことはみんなの前で言って欲しい」とコメントを返してしまいました。しかし、人事担当者や臨床心理士が「当事者の気持ちをくんで対応しましょう」とフォローしました。その上司は、部下に対する言い方がきつかったことを自覚し、話し方教室とアンガーマネジメント教室に通いました。結果、部署内の雰囲気は大きく改善したのです。

メンタル不調に至った本人も、その周囲の人も含めて支える仕組みが、効果につながっているのですね。復職後の再休職は少ないのではありませんか?

再休職する者の割合は3分の1ほどで、世間一般の約5割より少ない状態です。ただ、当社では三次予防(再発防止)は充実しておりますが、一次予防(未然防止)、二次予防(早期対応)はまだまだ弱い。今後はセルフケアやラインケアによる一次、二次予防の拡充が課題だと考えています。

SPISとは

SPIS画面イメージ

SPISは精神・発達障害を持つ方やメンタル不調の方向けの雇用管理システムです。個人の特性に合わせて評価項目を設定できる日報形式のシステムになっており、働く当事者それぞれの特性に合わせて項目設定した日報を、関係者間で共有します。

生活面・社会面・仕事面などの視点から評価項目を設定し、「良い」「悪い」を4段階で入力します。この自己評価点の推移をグラフ化する事で、体調面、精神面のアップダウンが一目瞭然となり、これによりご本人に声がけがしやすくなり、季節や月、週の流れやその時の出来事を一緒に振り返る事ができます。